2013年度「市民・NPOがつくる男女共同参画事業(地域出前企画)」として、NPO法人シャーロックホームズが男女共同参画センター南太田と協働して企画した「異世代で考える減災・防災術」。
「地図」と「IT」という2つの情報ツールを使って、南区のシニア女性と中学生が防災・減災について取り組みます。(講座全体の概要はこちら)
第1回めは、横浜市立南中学校にて、「地図読みこなし講座」を開催。2013年8月19日(月)、夏休み中の校舎にバスケット部の部員9名と地域で活躍されているシニア女性11名が集まってのスタートです。
講師は防災ファシリテーターの鈴木光氏です。
1.横浜でも大地震は起きるの?
「いつなのかは特定できませんが必ず来ます」と、鈴木講師。被害が大きいと想定されている「元禄型関東地震」を例にあげて説明していきます。
臨海部の一部では震度7、南区ではそれに次ぐ震度6強が想定されているとのこと。東日本大震災の揺れは市内で4~5強だったので、はるかに強い揺れが来るわけです。
南区は、市内でも被害が大きいとされる地域。倒壊、火災による死者数、避難所生活者といった具体的な数字をスクリーンで確認していきます。
全半壊の建物が12,667棟、火災による焼失が11,795棟。
区の人口約19万5千人のうち、発災4日後で16%、1か月後でも13%の方が避難所で生活することになるのです。
「記憶に新しい東日本大震災は津波被害が大きかったのですが、横浜で起こる地震の被害は都市型だった阪神淡路大震災の方が参考になります」と、ここであらためて一同をみまわす鈴木講師。
「でも中学生のみなさんは阪神大震災のときはまだ生まれてなかったですよね。」
うなずく中学生に驚くシニア女性たち・・・。
大人にとっては二つの震災は常識。でもティーンズにとっては震災といえば「東日本大震災」のことしかリアルには想起できないのです。
こういう常識のずれを認識できるのも異世代講座ならでは。
「それでは都市型の阪神大震災を想定した映像をみましょう」という鈴木講師の言葉につづき、スクリーンには阪神大震災を想定した揺れを再現した実験動画、さらに実際の阪神淡路大震災の映像が映し出されました。
家やオフィスを模した部屋で、固定されていない家具に次々と押しつぶされる人形。激しい揺れで部屋中を暴れまわるコピー機。
震災発生時の動画からは、倒壊した建物で道がふさがれている生々しい映像、撮影した人の「ガス臭い・・」というつぶやき。
一同食い入るように画面をみつめます。
さらに「横浜でもかつて実際に大きな地震は起こりました」と鈴木講師。
90年前に起こった関東大震災です。中心部と同様、現在の南区の一部でも激しい揺れと直後の大火災で大きな被害を受けたのです。
映し出されたモノクロの被害写真も、「過去の時代のこと」では済ませられないのです。
こうして自分事(じぶんごと)として災害を考える意識ができてから、いよいよ地図を使ったワークへ!
2.地図を使った災害イメージトレーニング
(DIG:Disaster Imagination Game)
数人のグループに分かれ、南区の現在の地図にビニールをかけてテーブルに固定し、まず川など目印になるものをなぞってから、自分の家にシールを貼っていきます。
と、ここで何人かの中学生たちが自分の家の位置がわからないというハプニング発生。
普段地図をみなれていない中学生にとってはちょっと難しい様子だったので、そこはシニア女性の出番。うまくリードして住所や周辺の建物などを聞きながら場所を特定し、無事全員シールでのマーキングが完了。
もとの地図が南区の土砂災害マップを使用しているので、自分の家がどういうエリアなのかが一目瞭然です。他にも防災拠点や広域避難場所などをマーキング。
学校から家、家から避難所までの道のりでの危ない箇所について確認していきます。
「うちの近くの防災拠点へはかえって危ない道だったので、掛け合って、別な安全な道からいけるところにしてもらったの」という話もでて、参加したシニア女性が日頃から防災に高い関心をもっていることがわかりました。
その後、地図を大正時代の古地図に交換して、先ほどのビニールをかけるとわあっという声が。
「昔の地形によって災害の危険性は変わります。例えば、湿地や川が流れていた土地は地盤がゆるく、土砂災害や液状化の危険が高い。造成等で風景は変わっても地名にその手がかりが残されたりしているのです。」という解説を聞きながら、自分の家や学校がもともとはどういう土地だったのかを見ようとみな頭を寄せ合います。
「ここは昔はがけだったのね~」など、シニア女性からも地図をみながら驚きの声があがりました。
3.まとめ~南区のチカラ~
地図を囲んでのおしゃべりが盛り上がる中、最後に鈴木講師がまとめました。
「災害がもし日中に起きた場合は、地域に残っているみなさんたちが頼りです。今日は顔を知った程度でもいいんです。うちの地域にはこんな元気なシニア女性がいるんだということを知って、いざというときにお互いに助け合えばいいと思っていただけることが大切です。」
「また今日学んだことは、是非みなさんおうちに持って帰ってご家族に話してください。防災拠点で避難生活を送るよりも自宅で生活する方がずっといいので、お持ち帰りの資料をみながら、家の危険個所やいざという時の備えの点検、情報の取り方などをみんなで話し合ってほしいと思います。」
続いて、南消防署予防課の松永ゆり氏にもコメントをいただきました。
「今こんな風にとても元気で頼りになるシニアの方たちですが、実際に被災したときは一時的に避難所で元気がなくなるかもしれない。そんなときは若くて体力のある中学生の出番です。今度は、中学生の皆さんから声をかけてあげてください。そのためにも、日頃から協力して地域を守っていってほしいと思います。」
なごやかな雰囲気のうちに講座は終了しました。
アンケートより抜粋:
帰ってから、どんな行動をしようと思いますか?(今日もしくは今後)について:
シニア女性・中学生ともに、家の中の安全・家具の固定・備蓄の見直しなどを中心に講座で学んだことを家族と共有したいとの意見が多くありました。また中学生は、登下校の安全な経路を確認したいという意見も何人か書いていました。
今日印象に残ったこと、感想や意見:
シニア女性・中学生どちらも、地図から読み取れる情報を通じて防災について考えられたことや安全を確認できたことが印象的だったようです。シニア女性は、中学生と一緒に講座をできたことがとても楽しく、また地元を支えるこれからの若い力に期待をこめた感想を述べられる方も何人かいました。
講座の準備から片づけまで、テキパキと手伝ってくれた南中学校のみなさん、ありがとうございました。講座時は、シニア女性のパワーの前に、やや静かだったかもしれませんが、関心をもって参加してくれた姿に頼もしさを感じました。
★今回の講座の記事がタウンニュース南区版に掲載されました!
~第ニ回「みなみ防災おしゃべりサロン」(2013.10.24)についてはこちら~
~第三回 「災害時に役立つ情報活用講座」(2013.12.21)についてはこちら~